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口頭発表

 

25、動物園と博物館の協力を通じて発見されたオウサマペンギンの口蓋黒色腫に関する事例報告

 

乾 公正

大阪市立自然史博物館 なにわホネホネ団

共同研究者:浜口美幸、米澤里美、西澤真樹子、和田岳 (大阪市立自然史博物館) 高見一利 (大阪市立天王寺動物園)

 

オスのオウサマペンギンの成鳥が天王寺動物園で7年間飼育され、2年半に渡って趾瘤症の抗生物質治療を受けた。この鳥は臨床的には、食欲不振、衰弱、呼吸困難の症状を見せて死ぬ結果となった。死体は、剥製を作るために大阪市立自然史博物館(OMNH)へと移された。肉眼的には、黒色のカリフラワー状のかたまりが上口蓋に認められた。顕微鏡を用いると、この腫瘍は、さまざまな量のメラニン色素を含む円形から紡錘状の腫瘍細胞があったため、黒色腫(メラノーマ)と診断された。転移の形跡は認められなかった。我々が知る限り、これはオウサマペンギンで初の症例である。
なにわホネホネ団は、OMNHを拠点として哺乳類や鳥の標本を作るボランティアサークルである。登録者は250名を超え、団員の経歴や専門分野は会社員、教師、学生、芸術家など多種多様である。我々は10年間で、哺乳類の標本約2,000体と、鳥の標本約1,000体を作った。研究業務のみならず、教育的アプローチを充実させるうえでも、動物の死体を有効活用することが極めて重要である。動物園、水族館、博物館の間における市民の協力のために我々が用意した枠組みは、有益で、世界的にも珍しい事例を示すものである。