第58回日本動物園水族館教育研究会 大阪大会 開催報告

第58回 日本動物園水族館教育研究会 大阪大会 開催報告

開催日時:平成29年11月25日(土) 13:00~17:30 平成29年11月26日(日)  9:00~ 12:00

開催地:大阪市立自然史博物館

共  催:大阪市天王寺動物園、大阪市立自然史博物館

大会テーマ:「生物多様性をどう伝えていくか」


 

2017年11月25日から26日の日程で、大阪市立自然史博物館を会場に第58回日本動物園水族館教育研究会大阪大会が開催され、多くの参加者が集まりました。

本大会のテーマは「生物多様性をどう伝えていくか」でした。基調講演としてWildlife Conservation Society(WCS)コンゴ共和国支部・自然環境保全技術顧の西原智昭氏に「野生生物を救うために動物園の保全教育に期待したいこと」と題したご講演をいただいたあと、2日間にわたって口頭発表20題、ポスター発表29題もの発表があり、熱心な意見交換が交わされました。

ポスター発表賞は、以下の4題が選出されました。おめでとうございます。

最優秀ポスター発表賞

「エンリッチメント体験で伝えられること」(公財)日本モンキーセンター 藤森唯、赤見理恵

優秀ポスター発表賞

「磯採集から展示・解説活動の実践「水族館をつくろう」」アクアワールド茨城県大洗水族館 田中宏典ほか

「ときわ公園の自然から生物多様性を伝える」宇部市ときわ動物園 村田真木、森尚子、木村嘉孝、高司佳秀、村上郁、川出比香里、白須道徳

「動物園における参加型環境教育の取り組み」公益財団法人沖縄こどもの国 吉岡由恵、佐藤寛之、東條公輝、杉本結衣

ポスター発表賞の集合写真

今回、大会にご参加された2名の方に、感想をお寄せいただいたのでご紹介します。

今回の大阪大会では、宇部市ときわ動物園として、3名で初めて参加させていただきました。ときわ動物園は、平成28年3月にグランドオープンしたばかりの動物園です。といっても、ときわ公園の一部に前身となる動物施設が昭和30年に開設して以来、無料ゾーンの動物施設として市民の癒し、娯楽の場として親しまれてきました。今回、リニューアルして動物園としての飼育スタッフが増えたのを機に、動物飼育とともに取り組んだのが、本大会でポスター発表させていただいた、ときわ公園というフィールドでのホタルや昆虫、野鳥、水生生物などの調査とそれらの多様性を伝える企画展です。調査、企画展とも多くのスタッフが関わっており、大阪で発表の場をもち、その取り組みを評価いただいたことは私どもも大変励みになりました。私自身もリニューアルと同時に13年勤めていた植物館から動物園に転勤しましたので、動物園経験はまだ5年目です。昨年より教育普及担当になり、体験学習館での企画や学習プログラムの作成などに携わることから、zoo教研に入会しました。動物園での学びや取り組み、野生動物の魅力などをどのように伝えるか、また、学校との連携などの模索を続けている日々です。子どもたちが疑問に思ったことは、手のひらのスマホに話しかければ答えてくれ、SNSなどで動物園に足を運ばなくても見ることができるような便利な世の中になりました。一方、アナログのままのような動物園・水族館ですが、スタッフや学校の先生方がワークショップなどで動物園教育に様々な方法で取り組み、実践していることを知り、意見交換できた研究会は私にとっては大変有意義でした。今後もたくさんの方々のご意見をいただきながら、仲間のスタッフとともに精進していきたいと思います。

今回の大阪大会でお世話になりました、高橋会長をはじめ、役員・事務局の皆様、天王寺動物園、大阪市立自然史博物館の皆様、そして参加者の皆様に深く感謝いたします。

村田真木(宇部市ときわ動物園)


 

本大会のテーマは「生物多様性をどう伝えていくか」でした。日本モンキーセンターでは「野生」、「自然」をテーマに活動していますが、その中で「多様性」という言葉はほとんど耳にしてきませんでした。そのため、本大会への参加は多様性について考え直すために、非常にいい経験となりました。

西原智昭氏による基調講演では、野生生物や自然環境が尋常ではないスピードで消失していること、そしてそのために動物園がすべきことについて話されました。森林伐採、木材搬出路の進出による密猟の拡大、それらに日本が大きく関わっていること、そうしたことに関する適切な情報を多くの人が知らないこと、保全の難しさについての、切迫感の伝わる講演でした。動物園がかかげる役割や存在意義についても、ひとつひとつ見直し、考え直す必要があることを訴えられていました。

霊長類たちの「野生」を伝える際、その種の特徴はもちろんですが、様々な形で他の生物と関わっていることも野生本来の姿です。絶滅の危機に瀕している霊長類を救うためには、そこにかかわる他の生物や植物を守る必要があることを伝えなくてはいけません。そして、ただ伝えるだけでなく、伝えた先に相手にどう行動してもらい、どう評価するか、ということまで私たちは考えなくてはいけない、ということを学ぶことができました。これまで見落としていたことが多くあったので、本当にいい機会でした。今回学んだことをきちんと理解し、今後の活動に活かしたいと思います。

また本大会において、「エンリッチメント体験で伝えられること」という題でポスター発表をおこないました。日本モンキーセンターでおこなっている「飼育員と一緒におやつを作ろう!」の紹介と評価について紹介しました。具体的な工程を提示していたためか、比較的多くの人に興味を持ってもらえた印象でした。質問も多くいただきましたが、印象的だったのは「このプログラムを通じて、参加者にどう行動してもらいたいのか?」、「野生をまねた環境は動物にとって"幸せ"なのか?」という質問でした。自分たちが実施しているプログラムの目的やゴール設定、使用する言葉の定義をきちんと考え、理解することの重要性を改めて感じました。他の参加者の方々の発表も興味深いものが多く、これまで参加してきたシンポジウムや学会とはまた違った視点での意見交換ができました。なお、本発表は幸運なことに、本大会の最優秀ポスター発表賞をいただくことができました。プログラムの評価まで実施していることが評価されたのだと思います。本プログラムでの評価はまだ始めたばかりですが、それでもこうした賞をいただけたということは、それだけ「評価する」ことが重要であることを再認識しました。

藤森唯さん(日本モンキーセンター)

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