第 59 回日本動物園水族館教育研究会 出雲大会 開催報告

第 59 回日本動物園水族館教育研究会 出雲大会 開催報告

開催日時:2018 年 12月 8 日(土)~ 12 月 9 日(日)

開催地:島根県立青少年の家サン・レイク

共  催:島根県立宍道湖自然館ゴビウス

大会テーマ:「動物園水族館とESD」


 

参加者数107名、口頭発表17演題、ポスター発表27演題と、前大会に迫る数とレベルの高さ演題が出されました。いずれも非常に素晴らしいものばかりで質疑応答も時間内ぎりぎりまで活発に行われました。

口頭発表のセッション1では連携・広がりという小テーマで行われ、大学生による動物園でのプログラム開発、地元の名人に学ぶ文化や自然を生かした講座、3歳児以下対象の動物介在教育や、7つの高校が協力して11年もの長期に水族館を利用したSSHの取り組み、および湿地をめぐる施設連携による長期連続プログラムについてそれぞれありました。さらに深く広い取り組みが出来るのが「連携」の良さで、近年それがより一般的になってきたと感じました。

次にポスターセッションが、奇数番号と偶数番号に分かれてそれぞれ行われました。2列両面に貼られたポスター会場では、多くの人と熱気に包まれ、あちこちで活発な討議が繰り広げられていました。配布用資料やPCを用いての補足などもあり、それぞれ趣向を凝らしたもので、読みやすくデザイン性の高いポスターも多く、質の高い発表ばかりであっという間の1時間でした。

口頭発表セッション2のテーマはESD・SDGsで、香港からお越しいただいたCarolさんによるスマホを活用した双方向性機能を持つモバイル図鑑の開発についての発表から始まり、動物園でのESD実践にあたってのロジカルな分析と提案、過去の本会の膨大な発表データの分析、動物園でESDに基づく小学校の授業の実践、ESDの視点に立ったプログラムデザインの構築とその評価や、WAZAが行った動物園水族館訪問前後の意識調査の紹介と考察、およびチンパンジーを題材としたラリー形式プログラムの実施と分析など多岐にわたる熱心な発表が行われました。

今回は懇親会から宿泊まですべて同施設でした。懇親会は1時間半という短い時間ながら、至る所で議論が沸き上がるなど大いに盛り上がり、会員間の相互交流も深まっておりました。また、例年通りオークションもあり多くのグッズ提供とご購入をいただきました。その後は合宿形式ならではグループ討議行われ、学校教育との連携2つ、ESD・SDGsをいかに動物園水族館で行うか、主体的深い学びについての4つのテーマで行われました。

2日目引き続き熱心な発表がありました。セッション3は多様性教育と分析・評価とし、幼稚園と図書館と大学が連携し成果物が図書館に保管される取り組み、動物を題材にした工作教室を気持ち温度計による評価や、動物園の展示場ごとに3つの指標による新たな評価方法について、および人気のナイトツアーを長期わたり実施した報告と分析、最後には助成金を受けて参加した世界水族館会議での報告と海外の大会に出るメリットにつてそれぞれ発表された。

全体討議では、大会テーマである生物多様性をいかに伝えるかについて様々な意見が出ました。最後にポスター賞の発表と表彰が行われ、鹿児島市平川動物公園の落合祐子さんほかによる「動物を通して『鹿児島らしさ』を伝える」が最優秀ポスター賞に選ばれ、那須高原自然学校の真山高士さんほかによる「地域を好きになる~動物園・水族館・地域連携ESD」、足立区生物園の仲宗根美乃さんによる「足立区生物園における教育利用研究会の取り組み」、仙台市八木山動物公園の永倉頌子さんほかによる「環境を題材にしたイベントの実施とその効果について」 の3題が優秀賞に選ばれました。最後に参加者全員で記念撮影を行って閉会となりました。

今回は県立青少年の家という性質から夜間の出入り禁止と消灯時間の徹底など様々な制約がある中、かえってそれが参加者の団結力や絆を深めることに繋がったようで、これまでの大会以上に非常に充実していたと感じました。

開催に際して、島根県立宍道湖自然観ゴビウスの館長はじめ職員の皆さま、公益財団法人ホシザキグリーン財団の職員皆さま、および島根県立青少年の家サン・レイクの職員の皆さんの多大なるご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。


 

動物園水族館に携わる人って、こんなに楽しいの!?

~第59回日本動物園水族館教育研究会に参加して~

2018/12/24
東京農工大学大学院
博士課程 2年
河 村 幸 子

今回、初めて参加いたしました。初めてのZOO教研での口頭発表。初めての島根県立青少年の家サンレイク。緊張して出雲空港に下りたのですが、受付する前から、初めてお目にかかる方と研究内容のお話ができ、ほっとしました。みなさん、気軽に笑顔でお声をかけてくださり、雰囲気の温かさに驚きました。

分刻みの行動予定をこなしていく体制がきちんとできていて、意識の高さもさすがプロ!

普段からお仕事をきちんとされていることが想像できました。

口頭発表プログラムのセッションの分け方も良かったです。セッション1は「連携・広がり」で0歳児から高校生までそれぞれの施設の特徴を活かし、質の高い教育活動が展開されていました。セッション2は「ESD・SDGs」Carol Liuさんの発表を聞いて、やはり教育内容の評価が問題であると感じました。それぞれみなさんの発表内容のレベルの高さに、自分の勉強不足を痛感いたしました。セッション3の「多様性教育、分析」もまさに、これから活かしていきたい手法が示され、研究に大いに役立ちました。「気持ち温度計」使わせていただきます!!

ポスター発表もどれもすごい!カメラに収め、東京に戻ってからも一枚ずつチェック。動物園や水族館でここまでの実践ができることが素晴らしいと思います。動物園水族館の専門家の方たちの日頃の姿や、研究者の方たちの思い切った実践に驚きです。

夜の分科会では飼育員の方々の切実な悩みを聞くことができました。来園者への対応や発信することの難しさなど、現実の問題はまだまだあることも確認できました。

夕食後の懇親会は今まで憧れていた動物園の方や研究者、ライターの方などお話の幅が広がりました。ZOO教研の層の厚さを感じました。そして、お宝のオークション、毎年恒例だそうですがこれにもびっくりです。専門書や作品がどんどん競り落とされていきます。その表情の楽しそうなこと!「ここは学会?!」私も勢いにのって、見たこともなかった大きさの沖縄のドングリをgetしました。私の宝物が増えました。日本各地からのおみやげが楽しく受け渡されていきます。

翌朝の野鳥観察モーニングフライトの集合時間は6時40分。それまでに荷物を整理して運び出し、部屋の掃除を終わらせなければなりません。しかもサンレイクの寝具のたたみ方点検や清掃点検は他の青少年自然の家と同じように厳しいもの。それが、深夜まで飲んでしゃべっていた人たちがスキッと起きて集合しているのです!(大学生では考えられないことです。)

マガンのフライト、数は少ないものの何組かが飛び立ち、しかも、そのチームは家族であることの説明を聞いてまた感動。鳥たちは家族でシベリアまでの旅を続けていくのです。霙の舞う中での観察も心に残りました。改めて出雲のよさを感じました。

観察会

こんなに熱意があって自分の仕事に誇りを持ち、生き生きとされて、もっともっと動物と人間との関係をより良くしようと常に考えている人たちがいるということに私は喜びを感ぜずにはいられませんでした。きっと日本の動物園、水族館はもっともっと進化する!そう確信いたしました。

大会中、同室や随所でお世話になったみなさま、大会の実行委員の方々、ポスター発表で丁寧に説明してくださったみなさま、ありがとうございました。感動いっぱいの大会でした。私もこれからしっかりと自分の仕事に向かい合いたいと思います。

そして、次回の大会は私の実家のある千葉県柏市です。また、お会いしましょう。それまでに自分も少しは成長しておきたいと思います。

集合写真

更新日:

Copyright© 日本動物園水族館教育研究会 , 2024 All Rights Reserved.